IPランドスケープをつくる
IPランドスケープと生成AI
■IPランドスケープとは
IPランドスケープとは特許庁の説明では、
経営戦略又は事業戦略の立案に際し、
①経営・事業情報に知財情報を組み込んだ分析を実施し、
1)公開情報:マーケット動向、有価証券報告、エコシステム、ビジネスモデルなど
2)社内情報:事業戦略、事業計画、強み弱み
3)知財情報;自社知財の強み、弱み、他社知財の脅威、ライセンス、知財戦略
②その結果(現状の俯瞰・将来展望等)を経営者・事業責任者と共有することとしています。
■知財部門の悩み
知財部門は、①の3)については情報のとりまとめはしてきたのではないでしょうか。しかし、IPランドスケープとなると総合的な情報収集と分析が必要になってきます。経営者が現状を俯瞰して、将来の方向を決めるための材料提供ですから、調べる情報の範囲も広がりますし、経営者が分かる内容に仕立てあげる必要があります。
長い間、出願や権利交渉に携わっていると、1)と2)の情報分析には疎くなります。経営企画と密に連携したランドスケープ作成ができれば、相互に補完することも可能でしょうが、一般的にはそううまくいきません。とすると、知財部門が自力でIPランドスケープを作成することになります。IPですからおのずと知財部門への期待は上がります。
■知財部門のスキルとデータを別の出口発見に応用
1)2)についての調査で専門部隊を凌駕することはできませんが、知財部門独自の視点からの仮説を提供することはできるのではないでしょうか。何といっても、知財部門の強みは特許や論文といったエビデンスデータを広範囲に扱えることと、実際そのデータを分析してきた実践力が自慢です。もっと自分たちの武器に自信をもちましょう。武器の使う方向とツールを少し変えるだけです。
方向としては、自社の得意な技術や事業領域だけでなく、範囲を広げて調査を行います。このときヒントとなるのは政府の政策関連資料などです。Society5.0、グリーンGX、水素、DX、人的資本経営などなど新しいテーマは目白押しです。
これらのテーマの調査には少し悩まれるかもしれません。ただ、調査にもいろいろあります。「深く詳細に」とか、「ざっくりヒントをもらいたい」など。
■生成AIが活躍するシーン
自社の強みの新たな出口を見つけるときには、ヒントをもらうやり方から始めてみてはどうでしょう。自社が精通している分野ではないので、門外漢なこともあります。そこに最初から「深く詳細に」の調査は無理があります。ここは、生成AIが活躍できるシーンです。ウソが入ることも覚悟のうえで生成AIを使ってみましょう。
■最新の情報で生成AIに判断させる
生成AIは膨大な知識を学習させているといっても、必ずしも最新の情報を補足しているわけではありません。世界のおおまかな動向は把握していても、最新の情報はもっていない可能性があります。そこは人が情報サイトにアクセスしてデータとして補完してあげる必要があります。
もう一つ、生成AIは貴社の強みは理解していません。強みについても生成AIにインプットしてあげる必要があります。できるだけ汎用性の高い内容にデータ(個別具体的なものはできるだけ避けて)にしましょう。
そして、尋ねてみましょう。「自社の強みが活かせるテーマ領域はどこでしょうか。対象テーマ領域、応用例、活かせる強み、理由を箇条書きにしてください。」
■発散
生成AIは自身が持っているテーマに関する洞察力と、インプットされた強み情報とテーマ領域の最新データを組み合わせて候補を出してくれます。ランドスケープ作成の第一歩となると思います。そして、生成AIが出してきたアイデアの有用性を議論してみてください。必ず何らかのヒントがあるはずです。これはいわゆる「発散」作業に相当します。
■発散
今度は狙いを定めたアイデアをもとに論文、特許情報に証拠や根拠を求めていきます。ひょっとすると、そのアイデアは特許からみるとブルーオーシャンかもしれません。このように、手がかりさえあれば、知財部隊のデータとツールで深掘りは簡単にできます。
これが「収束」の作業で、テーマを深掘りし、課題の発見、自社の強みとの親和性、競合を調査して行きます。
■As IsとTo Be
As Isは、今の事業の足元を指しています。足元の情報ついては知財部門は精通しているかと思います。しかし、一歩を踏み出した先(To be)はどのような風景かあるでしょうか。これは一様にはきまりません。既存の事業モデルを変えずに行くのか、それとも、強みの技術で新たな分野にでていくのか。それぞれにおける可能性を、強みで裏付けを行い、客観的にかつ自社の文脈を分かった調査分析ができるのは知財部門だけかもしれません。
生成AIの登場で仕事の仕方が大きく変わってます。早めに味方につけておくことをお勧めします。ただし、生成AIに頼り過ぎにはご注意を。人間による検証が必要であることは変わりません。
ニーズエクスプローラ社は生成AIによる知財業務の改革をご支援いたします。
キーワード:IPランドスケープ、知財部門の悩み、発散と収束、As Is,To Be